ブランドをつくるのは、寿司だけではない。
こんにちは。THINK CREATIONの鍬田和彦です。
今回は、金沢発の寿司ブランド「まいもん寿司」について、ブランディングとデザイン経営の視点から考察してみたいと思います。
実は、弊社THINK CREATIONも、まいもん寿司のメニューデザインを担当させていただいています。
仕事を通じてブランドに関わる立場だからこそ、単にお客様として利用するだけでは見えない、ブランドづくりについて考えてみたいと思います。
1. おいしい寿司を提供する。それだけでブランドになれるのか。
寿司店にとって、ネタの鮮度や品質、職人の技術、おいしさが重要であることは言うまでもありません。
しかし、飲食店の経営を考えると、それだけでは十分ではないと私は考えています。
お客様は、料理だけを体験しているわけではないからです。
店に入ったときの印象。
スタッフの表情や言葉遣い。
メニューの見やすさ。
料理が運ばれてくるまでの時間。
注文のしやすさ。
そして、店を出たときに残る記憶。
こうした体験が積み重なって、「また来たい」という気持ちが生まれます。
つまり、おいしい寿司を提供することと、お客様から選ばれ続けるブランドをつくることは、重なっているようで、少し違う仕事なのです。
2. メニューは、単なる料理一覧ではない。
弊社が担当させていただいている仕事の一つが、メニューデザインです。
メニューと聞くと、料理名と価格を並べたものだと思われるかもしれません。
しかし、私はメニューを、お客様とお店をつなぐ重要なコミュニケーションツールだと考えています。
どの料理を目立たせるのか。
どの順番で見せるのか。
写真と文字をどう組み合わせるのか。
商品の魅力を、どんな言葉で伝えるのか。
こうした設計によって、お客様が受け取る印象は変わります。
例えば、同じ料理でも、名前と写真だけを掲載するのか、素材やこだわりまで伝えるのかによって、感じる価値は違ってくるでしょう。
もちろん、メニューの役割は見た目を整えることだけではありません。
注文のしやすさや情報のわかりやすさも大切です。
メニューは、お客様が料理と出会う最初の接点の一つ。だからこそ、ブランドの考え方が表れる場所なのです。
私たちがデザインを考えるときも、単にきれいにつくるのではなく、お店が伝えたい価値と、お客様が知りたい情報をどう結びつけるかを大切にしています。
3. 外国人講師による英語接客レッスン。その意味を考える。
まいもん寿司のブランドづくりを考えるうえで、私が興味深いと感じるのが、外国人講師による英語接客レッスンです。
海外のお客様に寿司を楽しんでもらうためには、料理の品質だけでなく、コミュニケーションも重要になります。
食材について説明する。
おすすめの料理を伝える。
お客様の質問に答える。
食文化の違いにも配慮する。
こうした場面で、言葉が通じることは、お客様の安心感や満足度につながります。
ただ、ここで重要なのは、英語が話せるスタッフを育てることだけではありません。
スタッフが自信を持って接客できる環境をつくり、お客様によりよい体験を届けようとする姿勢です。
私は、こうした取り組みを、ブランドを支える人材育成の一つとして捉えています。
海外のお客様にとって、店舗スタッフとの会話も日本での食体験の一部です。
料理を提供するだけでなく、その魅力まで伝えられたら、食事の時間はさらに豊かなものになるかもしれません。
4. 研修に力を入れる会社は、何をつくろうとしているのか。
企業のブランディングというと、ロゴ、広告、Webサイト、店舗デザインなど、目に見えるものが注目されがちです。
しかし、本当に大切なのは、目に見えるデザインを支える仕組みです。
どれほど素晴らしいコンセプトを掲げても、店舗での体験が伴わなければ、お客様の信頼にはつながりません。
反対に、企業の考え方がスタッフに共有され、一人ひとりの行動に表れていれば、その姿勢は接客を通じてお客様に伝わります。
社内研修は、単に知識や技術を教えるためだけのものではないはずです。
会社が大切にしていることを共有し、現場で実践できるようにする。
その積み重ねが、店舗ごとの体験の質を支えていきます。
ブランドとは、会社が発信するメッセージだけではなく、現場で実践されていることそのものでもある。
私は、ここにデザイン経営の重要な視点があると考えています。
5. デザインと人材育成は、別々の仕事なのか。
今回、メニューデザインという仕事に関わる立場から、改めて考えたことがあります。
それは、デザインと人材育成は、別々に考えるものではないということです。
メニューは、料理の魅力を伝えます。
接客は、その魅力をお客様とのコミュニケーションに変えます。
研修は、スタッフがその価値を伝えられるように支えます。
そして、お客様が満足し、再び来店してくださることで、ブランドへの信頼が積み重なっていく。
もちろん、実際の成果には、料理の品質、店舗運営、価格、立地など、さまざまな要因が関わります。
だからこそ、一つの施策だけでブランドをつくろうとするのではなく、それぞれの接点が同じ方向を向いているかを考える必要があります。
私は、ブランディングをロゴや広告の制作だけで終わらせたくありません。
企業が持つ価値を見つけ、それが商品、サービス、接客、営業、そして経営の中で一貫して伝わる仕組みをつくる。
それが、私たちTHINK CREATIONが目指している仕事です。
6. ブランドは、現場で完成する。
まいもん寿司のメニューデザインに携わらせていただいているからこそ、今回の考察では、デザインを単体で評価するのではなく、ブランド全体の中で捉えることを意識しました。
おいしい料理をつくる。
その魅力をメニューで伝える。
接客を通じて、お客様に届ける。
研修を通じて、スタッフの力を育てる。
それぞれは違う仕事に見えます。
しかし、お客様にとっては、すべてが一つの体験です。
ブランドづくりとは、その体験を意図的に設計し、よりよいものにしていくことではないでしょうか。
これは寿司店に限った話ではありません。
製造業でも、医療でも、サービス業でも同じです。
優れた技術や商品を持っているだけでは、その価値が十分に伝わるとは限りません。
価値を見つけ、伝わる形にし、現場で実践し、信頼へとつなげていく。
その一連の取り組みが、企業のブランドを育てていくのだと思います。
デザインは、見た目を変えるためだけにあるのではない。企業が持つ価値を、お客様が実感できる形に変えるためにある。
これからも、実際の仕事を通じて出会ったブランドから、経営とデザインの可能性を考えていきたいと思います。

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