英語対応だけでは、選ばれない。
外国人観光客に来店してもらいたい。

そのために、英語メニューをつくる。
Webサイトを多言語化する。
スタッフに英語を勉強してもらう。

もちろん、どれも大切な取り組みです。

しかし、それだけで外国人のお客様に選ばれる店になるのでしょうか。

私は、ブランディングとデザインの仕事に約30年携わってきました。

その経験から考えると、インバウンド対策で本当に重要なのは、外国語に対応することだけではありません。

外国人のお客様に、自分たちの価値が伝わり、選ばれ、満足してもらえる仕組みをつくること。

今回は、そんな視点から、外国人に選ばれる店のブランド設計について考えてみます。

1. 外国人のお客様は、何を基準に店を選ぶのか。

日本人が飲食店を探すときのことを考えてみてください。

Googleマップで場所を調べる。
口コミを読む。
料理の写真を見る。
メニューや価格を確認する。
気に入れば予約する。

外国人観光客も、こうした情報を参考に店を探します。

ただし、海外から訪れたお客様にとっては、日本人なら知っている情報がわからないこともあります。

この料理は何なのか。
どんな食材が使われているのか。
価格はいくらなのか。
予約は必要なのか。
英語で注文できるのか。

店側にとっては当たり前のことでも、お客様にとっては来店を決めるための重要な情報です。

つまり、店の魅力があっても、それが伝わらなければ選択肢に入りにくい。

ここに、インバウンド時代のブランディングの課題があります。

2. 英語メニューは、翻訳するだけではもったいない。

私は、メニューデザインを単なる料理一覧だとは考えていません。

メニューは、店の魅力をお客様に伝え、注文を後押しするコミュニケーションツールです。

実際に、弊社THINK CREATIONでも、まいもん寿司のメニューデザインを担当させていただいています。

メニューを考えるときに大切なのは、情報を掲載することだけではありません。

どの料理を目立たせるのか。
写真で何を伝えるのか。
どの順番で見せるのか。
商品の特徴を、どんな言葉で説明するのか。

こうした設計によって、料理との出会い方は変わります。

例えば、寿司の名前を英語に翻訳するだけでは、その魚を食べたことのないお客様には魅力が伝わらない場合があります。

食材の特徴や味わい、食感、おすすめの食べ方などを簡潔に伝えれば、注文する際の不安を減らし、料理への興味を高められるかもしれません。

もちろん、情報を詰め込みすぎれば、かえって読みにくくなります。

必要なのは、単なる翻訳ではなく、お客様が理解し、選びやすい情報設計です。

メニューは、料理の情報を伝えるもの。そして、料理の価値を伝えるものでもある。

この違いは、小さなようで大きいと考えています。

3. Webサイトは、来店前から始まる接客である。

旅行者は、店に入る前から、その店を評価しています。

検索結果に表示された情報。
Googleマップの写真や口コミ。
公式サイトのデザイン。
料理の写真。
価格や営業時間。
予約方法。

これらすべてが、来店するかどうかの判断材料になります。

せっかく魅力的な料理を提供していても、営業時間がわかりにくい。
英語でメニューを確認できない。
予約方法が理解できない。
アクセス情報が不足している。

こうした小さな不便が、来店をためらう理由になる可能性があります。

だからこそ、インバウンド対策では、Webサイトを翻訳するだけでなく、来店までの流れを設計することが重要です。

例えば、

  • 検索や地図で店を見つけてもらう。
  • 写真やメニューで興味を持ってもらう。
  • 価格や営業時間を確認してもらう。
  • 予約や来店の方法を理解してもらう。
  • 実際に店舗で満足してもらう。

この流れを一つずつ確認する。

私は、Webサイトを単なる会社案内ではなく、来店前の接客を担う場所として考えています。

4. 英語を話せるスタッフがいる。それだけで十分なのか。

外国人のお客様を迎えるうえで、接客も大切な要素です。

例えば、料理について質問されたとき。
おすすめを聞かれたとき。
食材やアレルギーについて確認されたとき。

適切にコミュニケーションが取れれば、お客様の安心感につながります。

まいもん寿司では、外国人講師による英語接客レッスンなど、人材育成の取り組みも行われています。

私は、こうした取り組みを考えるとき、英語を話せる人を増やすことだけでなく、スタッフが自信を持ってお客様に対応できる環境づくりにも意味があると感じます。

ただし、英語の習得だけですべてが解決するわけではありません。

大切なのは、何を伝えるのか、どのように伝えるのかという接客の基本です。

店のこだわりを理解している。
料理の特徴を説明できる。
困っているお客様に気づける。
わからないことは、確認して正確に答えられる。

こうした対応があってこそ、言語のスキルが生きてきます。

そして、会社が大切にしている価値観が、スタッフの行動に表れる。

ここまで考えて初めて、人材育成とブランディングがつながってくるのではないでしょうか。

5. ブランドは、店内のあらゆる接点でつくられる。

ここまで、メニュー、Webサイト、接客について考えてきました。

それぞれを別々の施策として考えることもできます。

しかし、お客様にとっては、すべてが一つの体験です。

Webサイトでは高級感を打ち出しているのに、店舗の案内がわかりにくい。

料理の写真は魅力的なのに、メニューではその特徴が伝わらない。

スタッフの接客は丁寧なのに、注文方法が複雑で戸惑ってしまう。

こうした小さなズレが積み重なると、ブランド全体の印象にも影響します。

反対に、Webサイト、メニュー、店舗空間、接客、料理の品質が同じ方向を向いていれば、お客様はその店の価値を理解しやすくなります。

ブランディングとは、ロゴや広告を整えることだけではない。お客様が接するすべての場面で、一貫した価値を届けることです。

だからこそ、デザインだけでも、接客研修だけでも、Web制作だけでも終わらせない視点が必要になります。

それぞれをつなぎ、ブランド全体を設計する。

ここに、デザイン経営の考え方があると私は思います。

6. インバウンドは、外国人向けの施策を増やすことではない。

ここで、少し視点を変えてみたいと思います。

インバウンド対策というと、外国語のメニューや案内表示を追加することをイメージしがちです。

もちろん、それらは必要な対応です。

しかし、本質は、外国人向けの特別な仕組みを増やすことだけではありません。

自分たちの商品の魅力を理解する。
その価値が伝わる言葉を考える。
お客様が迷わない情報設計をする。
現場で適切に対応できる人材を育てる。
来店後の満足度を高める。

これらは、実は日本人のお客様に対しても重要なことです。

つまり、インバウンドをきっかけに、自社のブランドや顧客体験を見直すことができるのです。

外国人のお客様に伝わらないということは、もしかすると、日本人のお客様にも十分に伝わっていない部分があるのかもしれません。

そう考えると、インバウンド対策は、企業全体の価値を見直す機会にもなります。

7. あなたの会社は、選ばれる理由を伝えられていますか?

私は、ブランディングの仕事をするとき、最初からロゴやWebサイトの話をするわけではありません。

まず考えるのは、

「この会社は、本当は何で選ばれるべきなのか?」

という問いです。

どんな価値を提供しているのか。
競合とは何が違うのか。
お客様は何に魅力を感じるのか。
その価値を、どうすれば伝えられるのか。

そして、その答えを、商品、デザイン、Web、接客、営業へとつなげていきます。

インバウンドの時代だからといって、すべての企業が海外進出を目指す必要はありません。

しかし、国内外を問わず、選ばれる理由を明確にし、それをお客様に伝えることの重要性は変わりません。

優れた商品やサービスを持っているのに、その価値が十分に伝わっていない企業は、まだ多くあると感じています。

だからこそ、私はデザインを、見た目を整えるためだけのものにしたくない。

企業が持つ価値を見つけ、伝わる形に変え、選ばれる理由をつくる。

それが、私たちTHINK CREATIONのブランディングです。

外国人に選ばれる店を考えることは、改めて、自分たちの価値を問い直すことでもあるのです。

英語力を伸ばすには圧倒的な英語学習時間が必須
https://www.online.gymlish.com/